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ブランドって、何だろう?(その4)
2008/04/30 09:02 [Wed]
category:ブランド論
「ウチの会社をブランド化したい」、「ブランド価値を高めたい」・・・と良く聞く。中小企業経営者で組織される或る団体でも、この「ブランド」が話題になる。

このことを聞いて、誰もがきっと、「当然でしょ!」と思うだろう。
(無論、私も大賛成ではあるが・・・)
そして、この議論は、ブランド価値を高める“方法論“に移行する。

だが、待って欲しい。
「ブランド価値」を高めると、何かイイことがあるのか? 或いは、
「ブランド価値」を高めるとは、個々の会社(中小企業)にとって具体的にどうなった状態を言うのか?
その(短期的・中長期的な)到達点はどこなのか?

例えば、
A社は、これまで30年に亘って広告代理店として、ビジネスを続けてきた。社員の大半は、クリエーターである。顧客は、大手広告代理店と、直接取引をする企業とに分かれる。業務内容は、イベントの企画、会社案内やチラシ、パンフレット等の紙媒体やHPの制作など、一般的な広告代理店と同じである。理念は、「私たちは、顧客の発想を超えた発想を提供します」である。不況になれば広告費用は削減される。競争他社も多い業種である。

B社は、結婚式を企画演出する企業だ。新郎新婦は勿論のこと、親戚や友人など披露宴の参加者全員に「感動」を与えるビジネスである。新郎新婦が出会う馴れ初めから現在に至るまでの経緯、双方の生い立ち、結婚式に関する要望などの詳細をヒアリングし、その上で一種の“劇”を演じる。演じるのはプロの役者だ。演出家もプロであり、リハーサルにも余念がない。個々の結婚式(披露宴)に同じものはない。B社の競争相手は今のところ出現していない。

C社は、リホームを手掛ける会社である。会社には、金槌,ペンチ,塗料等を販売する販売部門が存在し、その歴史は長い。地元密着型企業としての認知度もある。リホーム事業に関して、顧客の大半は消費者(場合によっては大家さん)であるが、販売部門では、プロの大工さんも顧客だ。リホーム業界全体の潜在的市場は、?兆円との試算もあるが、他方では、「詐欺」、「不当請求」その他がニュースとして度々報道され、専門知識のない顧客は「誰を信頼して良いのか分からない」状態であり、想定した売上上昇には至っていない。

D社も挙げよう。同社は、お菓子の製造販売を手掛けている。名古屋では知名度も低くない。自社の店舗はなく、大半はデパートに卸している。外国(中国)や国内での各事件から、食に対する安全・安心に疑問を持たれている中、同社としては、「国産」を謳い文句にしたいが、その一方では、コスト(プライス)の点で消費者からの納得が得られるか否かは依然不透明である。

さて、上記A社D社にとって、「ブランド価値」を高める目的は何だろうか?
「ブランド価値」を高まったという状態は、どんな状態だろうか?
A社D社にとって、その目的は、それぞれ全て同じだろうか?

それぞれの会社の歴史も理念も、顧客やその会社を取り巻く競争関係、外部環境変化は皆一様ではない。まさか、全ての会社が、『ルイ・ヴィトンやハーレーを目指す』などとは言わない筈である。

向上させるべき「ブランド価値」と、自社を取り巻く内外の環境を踏まえた上での“到達点”とは、切っても切り離せない大きな関連性があるのではないか。

「ブランド価値」を上げる、という方法論は、こうした“到達点”が設定されて始めて議論するべきだと思うが、どうか。

「わが社は、○○に対して、□□□という文字(ロゴタイプ)・図形を通して、△△△というイメージを十分に伝え、収益の向上を図る」

上記○○は、「顧客」であることに間違いはない。
しかし、その顧客は一体どんな顧客だろう? B2Cでも、B2Bでも、単なる顧客から、もっと絞り込む必要はないだろうか。B2Cでも、お金の出所は誰か? 上記A社(B2B)であれば、顧客は「担当者」か、それとも、決済権限を有する「上司」か。B社(B2C)であれば、新郎と新婦、どちらに決済権があるか。場合によれば、両親かもしれない。C社はどうか。D社は、B2B2Cの業態であるとすれば、デパートの担当者が直接の顧客となる。その担当者が力を入れてくれるか否かで(棚割や扱うアイテムの数にも影響し)収益は変わる。それとも、最終諸費者(C)の厚い信頼を獲得することに高い優先順位を置くべきか。

上記□□□は、どうだろう。自社の商号(会社の登記簿に記載された文字)か、以前の「Panasonic」のようにサブブランドを使用するか、トヨタのようにエンブレムがあるか、又はそれを造るか。

大事な上記「△△△」で表現されるべき「(ブランド)イメージ」は何か。

 こうした議論、しかも競業関係にある他の企業でも当然に策定するものではない“戦略的”な議論があって、その後に方法論が議論されるべきではないか。

この「方法論」として、一般的なマーケティングミックス(4P)に倣えば、
A)向上させるべき「ブランド価値(イメージ)」に対応した製品の外観や機能、サービスの内容
B)向上させるべき「ブランド価値(イメージ)」に対応した価格設定
C)向上させるべき「ブランド価値(イメージ)」に対応し、顧客にダイレクトに届く販売チャネル
D)「ブランド価値(イメージ)」を顧客に対して効果的に伝えるプロモーションの媒体
をそれぞれ検討することになろう。

さらには、社内オペレーションとしては、
原材料の仕入れ・開発・設計・製造・品質管理・配送・電話対応・書類の内容・その体裁・社内の部屋のイメージ等々、全て「ブランド価値(イメージ)」に対応し、それを浸透させるものでなければならない。これらを誤れば、「ブランド価値」を上げるどころか、場合によっては(昨年頻発した各偽装事件からも明らかなように)一気に失墜する。

結局、方法論は、社内全員が大きく関与し、誰一人として無関係でいられるものではない。全員で、それに向けた取組みを企画立案し、実行し、検証し、さらには深化・学習するプロセス(PDCA)を採ることとなる。

少なくとも、沢山宣伝すれば良い訳ではなさそうだ。


戦略のパラドックス
2008/04/25 18:11 [Fri]
category:企業戦略論
最近、久々に真面目な本を読みだした。

「戦略のパラドックス」マイケル・E・レイナー(著)、翔泳社(出版社)

未だ1/4程度読んだだけである。だが、現時点での若干の感想らしきモノを書いてみたい。

著者は、前半でこう言っている(今、本を見てこのブログを書いているのではないので、正確性はご勘弁いただきたい)。

成功した企業と失敗した企業には、沢山の共通性がある。「成功した企業」と「失敗した企業」とは対立する概念ではない。
何もやらない企業 ⇔ 成功(失敗)した企業
こう位置付けている。成功か失敗かは、「不確実性」による。“幸運の女神”がほほ笑めば、大きな成功を手にできるし、そうでなければ大きな失敗になると。

確かに、PEST分析等のフレームワークを使用しながら、外部環境の変化を予測し、戦略を立てるべきだと、経営学の教科書には書いてある。KKD戦略(カン(K)と経験(K)と度胸(D))と揶揄される方法に比べて、それは論理的であり、内部組織の動機付けにも好ましい。

だが、仮説はあくまでも仮説であり、現実化するかどうかは、誰にも分らない。

論理的には十分納得できる仮説を立て、またそれが十分納得できる合理的な戦略であるからこそ、社員一丸となってそれに突き進むことになるが、実は、それが倒産の憂き目にあう可能性もまた高い。これが戦略のパラドックスと言われる所以である。

著者は、ソニーの開発商品の幾つかを時系列的に詳細且つ客観的に分析し、当時の戦略の正しさを強調しながら、それでも「不確実性」故に負けたという事例を紹介している。

こうした「不確実性」に対処するためのフレームワークが、この本の中心的内容らしい。

この週末で読み終えたい。

(えっ? 話はこれだけか、って? スミマセン! 汗)

ブランドって、何だろう?(その3)
2008/04/24 19:44 [Thu]
category:ブランド論
CIMG1502.jpg

先日、大阪へ出張した。その帰りに、わざわざ天王寺から道頓堀まで出かけ、「くいだおれ人形」を写真に納めてきた。7月8日で閉店するようだ。

私と同じ目的か、雨の降る中、何人もの人たちが人形の前で「ピース」をしていた。

現在、この人形の行く末がどうなるのかが、世間の関心事である。聞けば、100人(社?)以上の購入オファーがあると言う。大阪人は、大阪の象徴とも言えるこの人形が、外部に買われてしまうことも危惧しているようだ。

私は、これを機に「食事でも」と思い、店内を覗いてみた。
だが、万席である。閉店が伝えられる以前から、ずっと満員だったかは知らないが、閉店を聞き、皆ドッと押し寄せたのではないか。

さて、この「くいだおれ人形」、飲食店の「くいだおれ」としては、これまでどのような価値があったのだろうか。皆、大阪に来た記念として写真を撮るばかりで、飲食をしなかったと想像すれば、そして、そのことが今回の閉店につながったと仮定すれば、苦々しい話ではないか。

「時代に合わなくなった」と言うのが、今回の閉店の理由だとも伝えられている。確かに、道頓堀は、どちらかと言えば若い人たちが多い通りだ。“北”とは違う。店舗の外観、料理のメニューを見ても、若い人たちがターゲットの店ではない。以前は、きっと沢山のオジサンが道頓堀を歩いたのだろうし、若い人も和食を食べたのだろう。そして、皆、この「くいだおれ人形」を目印に、お店に足を運んだ時代があった筈である。その意味では、お店のブランドの象徴が、この「くいだおれ人形」であった筈である。

では、貴方だったらこうした時代の変化(外部環境の変化)にどう対応しただろう?
店舗の外観や、メニューを若者志向に変えて行っただろうか?

大阪はおろか日本全国にも浸透した「くいだおれ人形」、「くいだおれ」は、そのネーミングからも、若者志向のネーミングではない。お店も洒落た欧米の外観にすることは勿論物理的には可能だろう。
しかし、それまで培われたブランドイメージとは大きく乖離する。

(もっとも、一階は、「洋食コーナー」である。時代に合わせようとした努力は見られる)

かと言って、「くいだおれ人形」を撤去するとか、新たなネーミングをお店の名前とするとか・・・。

どこからか、「冗談ではない!」と聞こえてきそうだ。もし、このお店がそんなことをしたとすれば、大阪人は勿論、日本人全員から何を言われるか分からない。
しかし、売上は上がらない。大阪を象徴し、日本全国で知られた「くいだおれ人形」のお店が、閉店を余儀なくされた。

お店のオーナーの悩みはいかばかりかだったか。察するに余りある。

今回の閉店は、「くいだおれ人形」と言う著名ブランドによる自縛から、オーナー自らを開放する、という決断ではなかったのだろうか。

私としては、「お疲れ様でした!!」と言いたい。


ブランドって、何だろう?(その2)
2008/04/11 11:52 [Fri]
category:ブランド論
嬉しいことに、前回のブログに対して、以下のコメントを頂戴した。

私はお客様から支持されることが「ブランド」だと思います。
幾ら良いものを作っても、良いサービスを提供しても、お客様から支持されなければ、ただの自己満足になってしまいます。
最初はどんな商品でも「無名ブランド」です。
お客様に支持されて「有名ブランド」になって行きます。
では、どのようにして支持されるか?
中小企業経営の課題ですね!


おっしゃる通りである。ブランドを上げるため(お客様から支持されるため)には、自己満足ではいけない。自社全体におけるロジカルな客観化が必要である。

そこで、今回は、このコメントに多少答える形でブログを書いてみたい。

但し、この問題は、言うまでも「難問」である。

キーワードだけを列挙しても、「コーポレートブランド」、「プロダクトブランド」、「サービスブランド」、「地域ブランド」等があるばかりか、ブランド価値を上げる努力は、「B2(to)C」、「B2(to)B」、「B2(to)B2(to)C」という企業形態により大きく異なる。つまり、一般消費者が顧客である場合と、企業が顧客である場合とは、「ブランド」を語る上では全く異なるし、直接の顧客は企業であるが、最終的には一般消費者に流通する商品を製造する場合も想定しなければならない。消費者による購買の意思決定プロセスと、企業によるそれとは、全く異なるからだ。

さらに、ブランド価値を上げるための努力は、その企業が提供する「モノ(商品やサービス)」、自社の「顧客」、自社の「リソース(人・モノ・金)」全体から練られた戦略に係る事項であり、それを実行する社内プロセスにも深い関わりを持つ。

このことは、ブランド価値の「向上」を考えるのではなく、その「失墜」を思い浮かべれば、理解し易い。製品の取付プロセスの拙さで、死者が出た事例、食肉の偽装表示が原因で倒産に追い込まれた事例、菓子や高級料亭の偽装表示で営業停止となった事例などは、「CSR(企業の社会的責任)」ばかりではなく、「ブランド価値」と直結する問題である。

もっと卑近な例を挙げよう。
店頭や電話での店員さんの受け答えの拙さで、「も〜アッタマきた。この店には絶対こね〜!」と感じたことが、一度や二度はある筈だ。世間では有名かも知れないが、確実にブランド価値は落ちている。

店員さんの例を挙げて、若干「社内プロセス」を問題としたが、実は、社内だけでしっかりマネジメントすれば、「ブランド価値」が上がるものではない。中小企業(だけではなく大企業も)であっても、調達先(入りの部分)から販売先(出の部分)との関係から、下請け企業やOEM先、ないしはパートナーとの関係も重要である。

言い訳のように聞こえるだろうが、有名ブランドの「ルイ・ヴィトン」や「ROLEX」を例に挙げてお茶を濁すことなく、「ブランド」を真面目に考えれば、広範で深淵な世界である。

(実は、私のブランド価値を失墜しないためにも、冒頭のコメントに、一言二言では答えられない。ええっダメ? 許してくれない?? 汗)

また、書きます。

ブランドって何だろう?
2008/04/09 18:24 [Wed]
category:ブランド論
この語の起源が、牛だか何かの家畜に、“他の家畜と見分けるため“に焼印を入れることらしい。サザンの歌にもある「ブランニューデイ(新しい日)」とは、「焼印をいれたばかりの日」から来ているらしい。(こんなこと、どうでも良いのですが・・・)

どこの中小企業でも、「自社のブランド価値を高めたい」と話される。

では、「ブランド」とは一体何だろう?

「有名ブランド」と「無名ブランド」。
若し、こう分けるなら、少なくとも、商品やサービスを区別するために付けられた「名前(や図形、記号)」が表示されていれば、「ブランド」だ。

しかし、「ブランド」とは、イコール「名前」だろうか?
「ブランド」とまで高められた“何か”がなければ、そう言えないのではないか。

実際、モノの本(ブランド論)を見ても、定説はないようだ。識者もそれぞれの立場で論述している。

ところで、「経験価値マーケティング」という分野がある。
商品やサービスの価値は、その商品の機能やサービスの品質そのものではなく、特定の商品を購入し、身に付けて歩いたり、乗ったり、或いはそのサービスを受けている状態から、それぞれが「経験」・「体験」している状態に価値がある、という(少し乱暴な言い方かも知れませんが)。そうした「経験価値」を上げるマーケティング手法(戦略)は何かをテーマとしたものだ。

バイクの「ハーレー」は、そのバイクの機能や使い勝手,品質が良いから買う訳ではない。「ハーレー」に乗って、アウトローになった気分、社会の価値観や規制に縛られない自分を感じながら、ツーリングに行く。その自分が素適なのだ。「ナイキ」のスポーツシューズを購入する動機は、そのシューズを履いて、有名スポーツ選手になった気分になれるからである。そう言えば、子供のころ、「VAN」のトレーナーやシャツを着て、アイビーリーグの一員になった気分がしたっけ(ちょっと古い?)。

「ルイ・ヴィトンは、品質がイイから買うんだワ〜」と言う女性がいる。確かに品質は良いのだろうが、他にも品質が良い鞄はゴマンとあるから、「ブランド好き」と揶揄されることを避けるための “言い訳”ではないだろうか。

何れにしても、私の流儀に従えば、「ブランド」は、その表示を見て、単に「知ってる」というだけに止まるものではない。そこから、どんな感覚が生まれるか、が問題であり、「それを持って歩きたい」とか「それに乗りたい」、「それを買って・・・したい」という気持ちが起きる人が多くいれば、それは正に「ブランド」と呼ぶに相応しい、と思うのだが、如何だろう?