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知財ひとり応援談とは・・・知財の側面から中小企業を応戦する弁理士稲葉のブログです。
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ブランドって、何だろう?(その2)
2008/04/11 11:52 [Fri]
category:ブランド論
嬉しいことに、前回のブログに対して、以下のコメントを頂戴した。

私はお客様から支持されることが「ブランド」だと思います。
幾ら良いものを作っても、良いサービスを提供しても、お客様から支持されなければ、ただの自己満足になってしまいます。
最初はどんな商品でも「無名ブランド」です。
お客様に支持されて「有名ブランド」になって行きます。
では、どのようにして支持されるか?
中小企業経営の課題ですね!


おっしゃる通りである。ブランドを上げるため(お客様から支持されるため)には、自己満足ではいけない。自社全体におけるロジカルな客観化が必要である。

そこで、今回は、このコメントに多少答える形でブログを書いてみたい。

但し、この問題は、言うまでも「難問」である。

キーワードだけを列挙しても、「コーポレートブランド」、「プロダクトブランド」、「サービスブランド」、「地域ブランド」等があるばかりか、ブランド価値を上げる努力は、「B2(to)C」、「B2(to)B」、「B2(to)B2(to)C」という企業形態により大きく異なる。つまり、一般消費者が顧客である場合と、企業が顧客である場合とは、「ブランド」を語る上では全く異なるし、直接の顧客は企業であるが、最終的には一般消費者に流通する商品を製造する場合も想定しなければならない。消費者による購買の意思決定プロセスと、企業によるそれとは、全く異なるからだ。

さらに、ブランド価値を上げるための努力は、その企業が提供する「モノ(商品やサービス)」、自社の「顧客」、自社の「リソース(人・モノ・金)」全体から練られた戦略に係る事項であり、それを実行する社内プロセスにも深い関わりを持つ。

このことは、ブランド価値の「向上」を考えるのではなく、その「失墜」を思い浮かべれば、理解し易い。製品の取付プロセスの拙さで、死者が出た事例、食肉の偽装表示が原因で倒産に追い込まれた事例、菓子や高級料亭の偽装表示で営業停止となった事例などは、「CSR(企業の社会的責任)」ばかりではなく、「ブランド価値」と直結する問題である。

もっと卑近な例を挙げよう。
店頭や電話での店員さんの受け答えの拙さで、「も〜アッタマきた。この店には絶対こね〜!」と感じたことが、一度や二度はある筈だ。世間では有名かも知れないが、確実にブランド価値は落ちている。

店員さんの例を挙げて、若干「社内プロセス」を問題としたが、実は、社内だけでしっかりマネジメントすれば、「ブランド価値」が上がるものではない。中小企業(だけではなく大企業も)であっても、調達先(入りの部分)から販売先(出の部分)との関係から、下請け企業やOEM先、ないしはパートナーとの関係も重要である。

言い訳のように聞こえるだろうが、有名ブランドの「ルイ・ヴィトン」や「ROLEX」を例に挙げてお茶を濁すことなく、「ブランド」を真面目に考えれば、広範で深淵な世界である。

(実は、私のブランド価値を失墜しないためにも、冒頭のコメントに、一言二言では答えられない。ええっダメ? 許してくれない?? 汗)

また、書きます。

ブランドって何だろう?
2008/04/09 18:24 [Wed]
category:ブランド論
この語の起源が、牛だか何かの家畜に、“他の家畜と見分けるため“に焼印を入れることらしい。サザンの歌にもある「ブランニューデイ(新しい日)」とは、「焼印をいれたばかりの日」から来ているらしい。(こんなこと、どうでも良いのですが・・・)

どこの中小企業でも、「自社のブランド価値を高めたい」と話される。

では、「ブランド」とは一体何だろう?

「有名ブランド」と「無名ブランド」。
若し、こう分けるなら、少なくとも、商品やサービスを区別するために付けられた「名前(や図形、記号)」が表示されていれば、「ブランド」だ。

しかし、「ブランド」とは、イコール「名前」だろうか?
「ブランド」とまで高められた“何か”がなければ、そう言えないのではないか。

実際、モノの本(ブランド論)を見ても、定説はないようだ。識者もそれぞれの立場で論述している。

ところで、「経験価値マーケティング」という分野がある。
商品やサービスの価値は、その商品の機能やサービスの品質そのものではなく、特定の商品を購入し、身に付けて歩いたり、乗ったり、或いはそのサービスを受けている状態から、それぞれが「経験」・「体験」している状態に価値がある、という(少し乱暴な言い方かも知れませんが)。そうした「経験価値」を上げるマーケティング手法(戦略)は何かをテーマとしたものだ。

バイクの「ハーレー」は、そのバイクの機能や使い勝手,品質が良いから買う訳ではない。「ハーレー」に乗って、アウトローになった気分、社会の価値観や規制に縛られない自分を感じながら、ツーリングに行く。その自分が素適なのだ。「ナイキ」のスポーツシューズを購入する動機は、そのシューズを履いて、有名スポーツ選手になった気分になれるからである。そう言えば、子供のころ、「VAN」のトレーナーやシャツを着て、アイビーリーグの一員になった気分がしたっけ(ちょっと古い?)。

「ルイ・ヴィトンは、品質がイイから買うんだワ〜」と言う女性がいる。確かに品質は良いのだろうが、他にも品質が良い鞄はゴマンとあるから、「ブランド好き」と揶揄されることを避けるための “言い訳”ではないだろうか。

何れにしても、私の流儀に従えば、「ブランド」は、その表示を見て、単に「知ってる」というだけに止まるものではない。そこから、どんな感覚が生まれるか、が問題であり、「それを持って歩きたい」とか「それに乗りたい」、「それを買って・・・したい」という気持ちが起きる人が多くいれば、それは正に「ブランド」と呼ぶに相応しい、と思うのだが、如何だろう?

偽ブランド
2008/03/31 15:57 [Mon]
category:ブランド論
3月26日、山口県警により、皮革製品等製造卸売業者が逮捕された。容疑は、「偽ブランド販売目的所持」だ。自社が経営する店舗内において、ブランド「ルイ・ヴィトン」の商標が入った偽の財布20点(500円/個)を販売したという。

今更ながら、こうした事件は後を絶たない。

理由は、「買う人」がいるからだ。1個500円なのだから、偽物であることは承知の上。民度が低い、と言ってしまえばそれまでだが、この業者、値段からして、ターゲットは子供である可能性が高いのではないか。いや、或いは大人かも知れない。「たった500円なら、話のタネで(又は、シャレで)・・・」という気持ちをかき立てる大人向けのプライシングであることも想定できる。

製造元は中国であることが、ニュースやドキュメンタリーから良く報道される。こうした事態を防止するために、各国は中国に対して規制強化を求め、中国もこれに対処はしているようだが、竹の子のように、摘発してはまた出て来る。やはり、「買う人」がいるからだ。

(この脈絡とは全く無関係ではあるが、中国ではリンゴに商標「青森」が登録され、台湾ではうどん?に「讃岐」が登録されらしく、物議をかもしている)

売っているのは、日本ばかりではない。韓国の南大門市場やタイのパッポン通り等には、あらゆる偽ブランド品が並んでいるし、上海の川淵を散歩していても、日本人と見れば話しかけてくる。観光客のバスの中にも、乗り込んできて売ろうとする。商魂たくましい彼らの腕には、必ずと言って良いほど、金のロレックス(モドキ)が輝いている。
私が、彼らに「高そうな時計してますね」と揶揄すると、「これも偽物です」と、やや顔を曇らせがちに答える。彼らの表情からも、“恥しさ“が垣間見える。

帰国の際、個人的に使用する目的であっても、それが入管で発見されれば、没収を強要されるし、その量が多ければ、個人使用とは判断されず、法的処分を受ける。

ところで、こうした偽ブランドの製造販売に関して、「誰も、本物だと思って買う人はいないのだから、商標法で言われる“出所の混同”など生じていない。」とする主張がある(あった)。

確かに、商標権侵害では、「あの業者が、我が社の登録商標を使用しているから、我が社の商品であると誤認して(出所が混同して)、大変な迷惑を被っている。」という主張・議論がされる。
しかし、偽物ブランド商品を、「ルイ・ヴィトン」や「シャネル」だと思って買う人はいないし、売る側も日本語で「ホンモノソックリ〜!」と日本語で話しかけてくるのであるから、両者承知の上での取引だ。

しかし、こうした偽ブランドの製造販売が違法とされる趣旨は、「出所の混同」が生ずるからではない。他人の有名ブランドの価値にただ乗り(フリー ライド)して利益を得る所に問題があるのである。有名ブランドの商品と同じ素材が使用され、デザインも同じでも、有名ブランドが表示されていなければ、通常、誰も買わない。いくらそれが安くても。

有名ブランドの名前を付けたホテル,バー、スナック、喫茶店等が摘発されるのもこのためだ。

高いブランド価値を得た場合、それに伴う経済的利益(それに伴う知的財産)は、民事・刑事両面から、保護するメニューを国は用意している。

今後機会があれば、ブランド価値の向上を目的とした戦略について書いてみたい。

警察が来た!!(その5:最終回)
2008/03/28 17:35 [Fri]
category:特許権侵害による刑事罰
前回記載したように、大変な一日を終えた後、相当な期間が経過した。

事件の推移を心配していたクライアントからは、その後も「どうなった?」と連絡が度々あったが、「特に何の連絡もありません」と答えざるを得なかった。

ある日、1本の電話がクライアントからあった。検察官送致となった(送検された)、とのこと。

刑事訴訟法246条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。


「速やか」でも何でもない。「特別の定め」は知らない。

「やっぱり、刑事さんには信用してもらえなかったのか?」、「それとも内容が理解できなかったのだろうか?」と思った。
「もし起訴されたら、どうなるのだろう?」、「自分は、証人か参考人か、いずれにしても何らかの形で刑事裁判に出廷しなければならないのだろうか?」


検察官送致から数ヶ月した後に、担当検察官から一本の電話が事務所に入った。
2〜3、ご質問したいのですが、宜しいでしょうか?
私「勿論です。

検察官の質問は、実に当を得たものであり、私が二言三言を答えると、歯切れ良く、こう言った。

なるほど。大変良く解りました。
爽やかな受け答えだった。

程なく、クライアントには検察庁から一通の書面が届いた。

「不起訴処分」

この結果、私にしてみれば至極当然のことである。が、思い返せば不思議な点が多い。何故、特許権侵害罪を理由に、捜査機関がしかも強制捜査をしたのだろう。告訴があったとしても、何故。

特許を取った権利者(特許権者)により警察に提出された一通の告訴状によって、警察が強制捜査をしてくれるとすれば、権利者にとって、こんなにありがたいことはない。国の費用をかけて捜査をしてくれるからだ。特許権者が、自ら証拠を収集する必要はない。

しかし、嫌疑をかけられた側への真理的・経済的影響は、決して少なくはない。
もうずいぶん前のことではあるが、この事件を通して、特許の恐ろしさを改めて知ると同時に、国家権力の威力をまざまざと見せ付けられた。

「特許権侵害罪」という刑事罰が明文の規定として存在するのは事実であるとしても、一般の人々の中で、こうした刑事罰の存在を知る人は少ないだろう。
私が体験したこれらの事案が、今後多発するとは到底考えられない。

しかし、民事訴訟が継続している中で、悪質な取引が繰り返されている場合には、刑事罰が問われる可能性が皆無とは言えない。

他方、商標権侵害の場合には、事案を見て警察が動くことは珍しくは無い。
(気をつけましょう!)

(完)

警察が来た!!(その4)
2008/03/27 19:51 [Thu]
category:特許権侵害による刑事罰
警察署では、前回と同じ空間に通された。
左右両側は、スチールの書棚で囲まれ、私の後ろには窓があった。窓からは満開の桜が見えた。古いスチール机を挟んで、刑事さんと向かい合った。左の戸棚を挟んだ隣にも、同じような空間があるらしく、話が良く聞こえた。
(さすがに、「取調室」ではなかったし、刑事モノのドラマのように、小さなスタンドランプも無かったし、鏡も無かった。)

さて、この間の続きですが・・・

刑事さんは、パソコンを取り出した。これから調書を作成するようだ。
このパソコン、自前でね〜。署が買ってくれないんですわ〜
刑事さん、こちらが聞いてもいないことを勝手に話し始めた。今回は、前回とは違う雰囲気である。
そうですか。大変ですね〜。パソコン位を用意する予算はあるでしょうに
私も相槌を打ちながら、話を合わせた。

私は、用意した書面を鞄から取り出し、「特許請求の範囲」の解釈について、ゆっくり丁寧に説明した。そして、既に、特許権者は、特許出願以前から到る所で販売していたこと、幾ら特許は取れているとしても、その特許は無効であることを説明した。

午前中の説明が終わった。近くの喫茶店で昼食をとり、また午後から再開した。

刑事さん、午後は一生懸命パソコンのキーを打っている (これがまた遅い!)。
一方、こちらは手持ち無沙汰この上ない。
その間、警察署には色々な“お客”が入ってきた。

刑事さん
お前、シンナー吸っトッタンだろ〜
若い女性(声のみから判断して)
吸っトラヘンわ〜
こんな声が、こちらには筒抜けである。

この若い女性、シンナーの使用を嫌疑に補導されたようだ。程なく、この女性の父親と思しき男性が到着した。父親は離婚し、彼女には母親は居ないようだ。父親は、職場から警察署に飛んできた様子である。厳重注意ということか、子供を連れてお帰りになった。その際、刑事さん、
「もー、やったらあかんゾー」

そうこうしている間に、目の前の刑事さん、書類ができたということで、私に読んで聞かせてくれる。

一杯の誤字脱字である。途中、これらを一々直して、また再開する。再開まで、またこちらは待つ。

こんなやり取りが一応終わり、終盤を迎えた。こちらも、相当疲れている。
「さー、これで取り敢えず解放される。」と思いきや、刑事さんは、作成した文書の最後を読んだ。

刑事さん
では、ここに署名捺印を押して。え〜っと、税理士の稲葉さんでしたね。

(唖然として)・・・。 あの〜〜、税理士じゃ〜ないんですけど。

名刺交換もしたし、予め送っておいた書面にも私の事務所名、肩書も明記してあった。肩書を間違えられたことが、私の疲れを倍増させたばかりか、情けなくもなった。
何で、こういう人たちに、特許権侵害の刑事事件を扱わせるのだろう。

(つづく)